- 歌の意味
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言わずに思っていることは、口に出して言うのに勝っている。
- 鑑賞
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152 いはで思ふ
同じ奈良の帝は狩が好きだったので、磐手から贈られた鷹を狩用の手鷹として飼い慣らし、いわてと呼んでいた。これを鷹狩りの経験のある大納言に預けたところ、どうしたことか鷹を取り逃がしてしまった。狂乱の体で探し回るが見つからない。数日過ぎて誤魔化しきれないので、ついに帝に申し上げると何の返事もない。もう一度言うが返事がない。自分が自分でないような恐怖に震えながら、鷹がいなくなってしまったのです、どうしたらよいかおっしゃってください、と繰り返すと、帝はただこの句だけを言って他には何も答えなかった。あまりにも深く残念に思われたからだろう。世間の人はこれにあれこれと上の句を加えて歌にしたが、実際は下の句だけを詠んだのだった。
奈良の帝は奈良の都の帝で、百五十段と百五十一段にも登場する。磐手は陸奥の国の地名である。大納言については、鷹狩りの経験のある大納言という以外、地の文に記載がない。
場面は宮中である。預けた鷹を逃がされ、大納言が繰り返し指示を求めていた。
詠出の直接の契機は、その大納言の問いである。帝は他に一言も答えなかった。
地の文は、世間の人がこれに上の句を加えて歌にしたが、実際は下の句だけを詠んだのだと明かす。段はその説明で閉じられる。
この句は上下句のそろった短歌ではなく、七七の下の句だけである。歌の形をとらない一句として、この作品では珍しい例にあたる。
「いはで」に、口に出さないでという意と、鷹の名である磐手とが掛かる。何も言わないでいることと、いわてを思うこととが、この一語で重なる。
「思ふぞ」の「ぞ」の係りが結句の「まされる」で結ばれる。
「言ふにまされる」は、口に出して言うのに勝っている、の意である。指示を求める相手に対し、言うことは何もないと答えたことになる。何も言わないこと自体が答えである、という形をとっており、上の句を欠いたまま伝わったこと自体が、この句の性格を示している。
奈良の帝——奈良の都の帝。
磐手(いはて)——陸奥の国の地名。
手鷹(てたか)——手に据えて狩に用いる鷹。
大納言——太政官の官職。右大臣に次ぐ。
いはで——「言はで」と鷹の名「磐手」との掛詞。
まさる(四段動詞)——勝る。上回る。
下の句——短歌の後半、七七の部分。
ぞ〜る——係り結び。強調を表す。
- 出典
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大和物語
- その他の歌
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