あやめ刈り君は沼にぞまどひける
われは野にいでてかるぞわびしき
- 歌の意味
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菖蒲を刈るのに、あなたは沼で迷っておられたのだ。私は野に出て刈るのがつらい。
- 鑑賞
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164 かざりちまき
在中将のもとに、ある人がかざりちまきを寄こしたので、その返しにこの歌を言いやり、雉を贈った。地の文はこれだけで、段はこの一首をもって閉じられる。
在中将は在原業平で、百六十一段から百六十三段まで続けて登場し、百六十五段ではその臨終が語られる。かざりちまきは五月五日の節句に菖蒲などで飾った粽である。贈り主については、人という以外、地の文に記載がない。
場面は五月五日の節句のころである。粽が贈られてきたことから知れる。
詠出の直接の契機は、そのかざりちまきを贈られたことである。歌は返礼として言いやられ、雉が添えられた。
段はこの一首と、雉を贈ったという一文で閉じられる。
「あやめ刈り」は菖蒲を刈ることである。節句の飾りに用いるため、沼や水辺で刈るものである。贈られた粽の飾りが、そのまま歌の題材になっている。
「君は沼にぞまどひける」は、あなたは沼で迷っておられたのだ、の意である。「ぞ」の係りが「ける」で結ばれる。菖蒲を求めて沼を歩き回った労を、まず認めている。
「われは野にいでてかる」の「かる」に、草を刈ることと、鳥を狩ることとが掛かる。相手が沼で刈ったのに対し、こちらは野に出て狩をしたことになる。返礼に雉を贈るという行いが、この一語で歌に収まる。
結句の「かるぞわびしき」は、刈るのがつらい、の意である。沼と野、刈ると狩ると、相手の労と自分の労とを対に置いており、贈り物への返礼を歌で述べる形になっている。
在中将(ざいちゅうじょう)——在原業平のこと。
かざりちまき——五月五日の節句に菖蒲などで飾った粽。
あやめ——菖蒲。節句の飾りに用いる。
沼(ぬま)——菖蒲の生える水辺。
まどふ(四段動詞)——迷う。歩き回る。
かる——「刈る」と「狩る」との掛詞。
わびし——つらい。やるせない。
雉(きじ)——きじ。狩の獲物。
- 出典
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大和物語
- その他の歌
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