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さかしらに柳の眉のひろごりて
春のおもてを伏する宿かな

歌の意味
利口ぶって柳の眉が広がってしまって、春の顔をうつむかせている宿だことよ。
鑑賞
301 三月ばかり、物忌しにとて

 三月ごろ、物忌をするというので、仮住まいとして人の家に行った。そこの木々の中に、葉が広く、あまり優雅とはいえない柳があったので、作者が、あれは柳ではないでしょう、と言うと、こういう柳もございます、と答える者があった。
 家の主も、答えた者も、本文には名が記されていない。
 時は三月ごろ、場所は物忌のために身を寄せた人の家である。
 柳ではあるまいと言った作者に、こういう柳もあると言い返されたことが、この歌が詠まれた直接の契機である。
 この段はこのあと、同じく物忌のために人の家に出向いて退屈していた折の、中宮とのやりとりへと続いていく。

 初句「さかしらに」は、利口ぶって、さしでがましくの意で、まず対象への評価を投げ出す。人ではなく柳に向けられた言葉であるが、こういう柳もあると言い返した相手への当てこすりが同時に響く。第二句「柳の眉の」は、細い柳の葉を美人の眉に見立てる古来の趣向で、その眉が本来は細くあるべきものだという前提を置く。
 第三句「ひろごりて」は広がっての意で、その眉が太く広がってしまったさまを示す。眉が広がるとは、美しくあるべきものが崩れたということであり、柳が優雅を失っている状態を、化粧の乱れた顔として描き出している。
 第四句「春のおもてを」は春の顔面をの意で、柳の眉から自然に顔へと連なる。結句「伏する宿かな」の「伏す」はうつむかせる意で、春そのものが恥じ入って顔を伏せている宿だ、と言い収める。「かな」は詠嘆の終助詞である。
 眉から顔へ、顔から宿へと、見立てが段階的に広がっていく構成であり、一本の柳への批評が、そのままその家全体の風情のなさへの評言に転じる。作者が物尽くしの段で繰り返し示してきた、優雅と無粋とを見分ける目が、居候先の庭木という些細な対象に向けられた例であり、同じ段の中宮との贈答歌の格調とは意識して対照をなしている。

さかしらなり:利口ぶっている。さしでがましい
柳の眉:細い柳の葉を美人の眉に見立てた言い方
ひろごる:広がる
おもて:顔。顔面
伏す:うつむける。伏せさせる
かな:詠嘆をあらわす終助詞
物忌:凶事を避けるため一定期間、身を慎み外出などを控えること
なまめかし:優雅である。上品で美しい
作者
清少納言
出典
枕草子
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