- 歌の意味
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誓いなさい、あなた。遠江の神にかけて。まったく浜名の橋を見なかったというのか。
- 鑑賞
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316 ある女房の、遠江の子なる人を
ある女房が、遠江の守の子である人と深い仲になっているという噂が立った。当の女房は、親の名にかけて誓わせてください、とんでもない嘘です、夢の中でさえ逢ったことはない、と言い張っているが、どのように言えばよいでしょうか、と作者に相談してきた。
遠江の子なる人とは遠江守の子をさす。当の女房も、その相手も、本文には名が記されていない。
場所は宮中と見られるが、本文に明示はない。
噂を否定する女房が、その否定をどう言いあらわせばよいかを作者に相談したことが、この歌が詠まれた直接の契機である。
本文はこの歌を掲げるのみで、女房がこれを用いたかどうか、相手がどう応じたかは記されていない。
初句「誓へ君」は命令形で、誓いなさいと相手に迫る形から始まる。相談してきた女房の言葉、親の名にかけて誓わせてくださいをそのまま引き取り、では誓えと突き返す構えである。第二句「遠江の」は、噂の相手の父の任国である国名であると同時に、遠くにある淡海、すなわち浜名湖をさす語でもあり、次の「浜名の橋」を呼び起こす。
第三句「神かけて」は、神に誓っての意で、初句の命令と呼応する。第四句「むげに浜名の」の「むげに」は、まったく、ひどくの意で、否定を強める。浜名の橋は遠江の歌枕であり、国名から地名へと、相手の身元をたどるように語が連ねられている。
結句「橋見ざりきや」の「き」は過去、「や」は疑問の係助詞で、見なかったというのか、と問い返す。この「見る」は、単に目にする意にとどまらず、男女が契ることをいう古語の用法を含んでおり、表向きは名所を見たかどうかを尋ねながら、実際には関係の有無を問うている。
国名、湖、橋、そして見るという動詞の二重の意味が一続きにつながり、否定すればするほど地名の連なりが相手を指し示す仕掛けになっている。誓えと迫る強い調子でありながら、疑いを直接には口にしないという点で、宮仕えの場における言葉の使い方をよく示す一首である。
遠江(とほたあふみ):今の静岡県西部にあたる国名。「遠つ淡海」の意で浜名湖をさす語でもある
浜名の橋:遠江の歌枕。浜名湖にかかっていた橋
かく:誓う際に、神仏の名を引き合いに出す
むげに:まったく。ひどく
見る:目にする意のほか、男女が契る意でも用いる
き:過去をあらわす助動詞
や:疑問をあらわす係助詞
守(かみ):国司の長官
あらがふ:否定して言い争う
- 作者
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清少納言
- 出典
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枕草子
- その他の歌
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