こゑはせで身をのみこがす螢こそ
いふよりまさる思ひなるらめ
- 歌の意味
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声も立てずにただ身を焦がしている蛍のほうこそ、口に出して言う人よりも、思いは深いのでしょう。
- 鑑賞
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第一部 蛍
兵部卿宮の歌への返しである。こうした折の返歌に長々と思案するのは素直でないので、早く返すことだけを取り柄として、そっけなく申し上げただけで、姫君ご自身は奥へ引き入ってしまわれた。宮はよそよそしい扱いを恨み言に訴えるが、居続けて夜を明かすのも色めいて見えるので、軒の雫に濡れながら夜深くにご退出になる。ほととぎすもきっと鳴いたことだろうが、面倒なので語り手は聞きとめなかったという。宮のご容姿の優艶さは源氏によく似ていらしたと女房たちも褒めあい、昨夜まことに母親めいて世話を焼いていた源氏の内情を知らぬまま、畏れ多いことと言い合っていた。
「こゑはせで」は声も立てずにの意で、宮の歌の「なく声もきこえぬ虫」を受けている。「身をのみこがす」は身を焦がす、すなわち恋い焦がれることで、蛍が光ることと重なる。「いふよりまさる思ひ」は口に出して言う者より深い思いということ。宮の求婚をまともに受け止めず、蛍そのものについての一般論に転じてかわしている。「音もせで思ひに燃ゆる螢こそなく虫よりもあはれなりけれ」を引くとされる。巻名「蛍」はこの歌と、源氏が蛍を放った趣向とに由来する。
こゑはせで:声も立てないで。
身をこがす:身を焦がす。恋い慕う。蛍の光ることと重なる。
いふよりまさる:口に出して言う者よりまさっている。
思ひ:「ひ」に「火」を掛ける。
らめ:…であろう。推量。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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