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うちとけてねもみぬものを若草の
ことあり顔にむすぼほるらむ

歌の意味
打ち解けて共に寝たわけでもないのに、どうして若草のようなあなたは、何かあったかのような顔をしてふさぎこんでいるのだろうか。
鑑賞
第一部 胡蝶

 源氏は、まったくの他人であっても世の道理として許すものを、これほど長く親しんできた仲でこの程度のことが何を疎ましいのかと言い、これ以上強引な心は見せまいと語りつづける。我ながら唐突で浮ついたことだと自覚し、女房たちにあやしまれることも思って、夜も更けぬうちに退出した。玉鬘は、男女の間をまるで知らぬまま思いがけない世だと嘆き、女房たちは気分が悪いのかと持て余す。兵部の君などが、実の親でもこれほどには世話してくださるまいとささやくにつけ、いよいよ厭わしく、わが身を情けなく思うのだった。翌朝早くに届いた手紙は、白い紙の表向きはそっけないものに、たいそう美しく書かれており、そこにこの歌があった。

 『伊勢物語』四十九段の、兄が妹に贈った「うら若み寝よげに見ゆる若草をひとの結ばむことをしぞ思ふ」と、その返しを踏まえている。「ね」は「寝」に草の「根」を掛け、「根」は「若草」の縁語である。「若草」は玉鬘をさす。「ことあり顔」は何かあったかのようなようす、「むすぼほる」は結ぼれる、気がふさぐ意で、これも「根」の縁語として働く。何もなかったのだから何を沈んでいるのかと、白を切ってみせる詠みぶりであるが、その白々しさこそがこの手紙のいやらしさである。玉鬘は厚ぼったい陸奥国紙に、気分が悪いので返事はいたしませんとだけ書いて返した。その素っ気なさに源氏はかえってほほ笑み、恨みどころがあるように感じるというのだから、困った心であると語り手も呆れている。

うちとく:打ち解ける。気を許す。
ね:「寝」に草の「根」を掛ける。「若草」の縁語。
若草:春の若い草。ここでは玉鬘をさす。
ことあり顔:何かあったかのようなようす。
むすぼほる:結ぼれてほどけない。気がふさぐ。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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