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その駒もすさめぬ草と名にたてる
汀のあやめ今日やひきつる

歌の意味
馬さえ食べようとしない草だと評判の、汀の菖蒲であるわたくしを、今日はお引き立てくださったのでしょうか。
鑑賞
第一部 蛍

 端午の節句のこの日、六条院の馬場殿では騎射が行われ、その支度は花散里の夏の町がととのえた。夜になって、源氏はこちらでお休みになる。世間話のついでに兵部卿宮を褒めると、花散里は、宮は御弟君でいらっしゃるが殿より年上に見えたなどとおっとり応じる。源氏は一目で見抜かれたと思いつつ、他の人々の批評は口にしない。二人は今はただ通りいっぺんの間柄で、寝所も別々になっており、源氏はどうしてこうなってしまったのかと心苦しく思っている。長年こうした催しを人づてに聞くばかりだった花散里は、今日この町で御遊びが行われたことだけを名誉に思い、この歌を詠んだ。

 「その駒もすさめぬ草」は「香をとめてとふ人あるをあやめ草あやしく駒のすさめざりけり」を引き、馬さえ見向きもしない草として自分をたとえたものである。「すさむ」は気に入って賞玩する意で、ここでは馬が食うこと。「あやめ」は端午の節句にちなむ語であり、みずからをなぞらえている。「ひき」は菖蒲の根を「引く」意に、馬を「牽く」意を掛け、前者は菖蒲の、後者は駒の縁語として働く。男に顧みられなくなった女の嘆きは和歌の類型であるが、恨みがましくならずおおらかに言うところに、この人の徳がある。源氏は何という歌でもないと思いながら、しみじみと情味を感じるのだった。

駒:馬。
すさむ:気に入って賞玩する。ここでは馬が草を食うこと。
名にたつ:世に評判が立つ。
汀:水ぎわ。
あやめ:菖蒲。ここでは花散里自身をたとえる。
ひく:菖蒲の根を「引く」意と、馬を「牽く」意とを掛ける。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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