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風まぜに雪は降りつつしかすがに
霞たなびき春は来にけり

歌の意味
風にまじって雪は降り続けているが、そうはいってもやはり霞はたなびいて、春は来たのだった。
鑑賞
巻第一 春歌上 8

詞書「題しらず」
 雪と霞という冬と春の景物を同じ一首の中に並べ置き、それでも春は来たのだと結ぶ歌である。ここまでの数首が雪の中の春を詠んできた流れをまとめる位置にある。詞書は「題しらず」で、詠まれた事情は伝わっていない。
 作者は「よみ人しらず」とあり、人名は伝わっていない。
 時期は立春を過ぎたころ、場所は特定されない。
 詠まれた直接の契機は伝わらない。
 この歌は『万葉集』巻十に見える「風交り雪は降りつつしかすがに霞たなびき春さりにけり」に基づく。結句を「春は来にけり」と改めた形で『新古今和歌集』に採られている。

 初句「風まぜに」は風にまじって、の意で、雪が横なぐりに降るさまを表す。
 二句「雪は降りつつ」の「つつ」は動作の継続を表す接続助詞で、今も降りやまない状態を示す。ここまでは冬の景である。
 三句「しかすがに」は、そうはいうもののやはり、という意の副詞で、一首の転換点に置かれている。上の句の冬と下の句の春とを、この一語がつないでいる。
 四句「霞たなびき」で春の景物が現れ、結句「春は来にけり」で言い切られる。雪と霞が同時に存在するという矛盾した景を、「しかすがに」の一語で受け止めているところが眼目である。
 『万葉集』の原歌は「春さりにけり」と結ぶ。「春さる」は春が来るの意で、これを『新古今和歌集』では当時通用の「春は来にけり」に改めており、巻頭の良経歌や第四首の宮内卿歌と同じ結句がここでも繰り返される形になっている。

しかすがに:そうはいうもののやはり
春さる:春が来る。「さる」は移り来る意
作者
よみ人しらず
出典
新古今和歌集
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