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時はいま春になりぬとみ雪降る
遠き山辺に霞たなびく

歌の意味
季節は今まさに春になったといって、深い雪の降る遠い山のあたりに霞がたなびいている。
鑑賞
巻第一 春歌上 9

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 前歌と同じく、雪と霞が同時に見える景を詠む。ただしこちらは近景の雪ではなく、遠い山の稜線に目を向け、そこに霞が横たわるさまを描く。詞書
作者ともに前の歌から続いており、独立した表記はない。
 作者は前歌に続いて「よみ人しらず」であり、人名は伝わっていない。
 時期は立春の直後、場所は雪の残る遠い山辺である。
 詠まれた直接の契機は伝わらない。
 この歌も『万葉集』巻十に見える歌に基づくもので、前歌と並べて配されている。

 初句「時はいま」は、季節はちょうど今、の意である。時を強く指し示して歌が始まる。
 二句「春になりぬと」の「ぬ」は完了の助動詞で、春になったという確定を表す。「と」は引用で、下の景がそう告げているかのように読ませる働きをもつ。
 三句「み雪降る」の「み」は接頭語で、深く降り積もった雪をいう。ここで再び冬の景が置かれる。
 四句「遠き山辺に」は遠い山のあたりで、視線が一気に遠景へ移る。近くでは雪が降り、遠くでは霞が立つという空間の対比が生まれる。
 結句「霞たなびく」は動詞の終止形による言い切りで、第二首の後鳥羽院歌と同じ結び方である。前歌が「しかすがに」という接続の語で冬と春をつないだのに対し、この歌は近景と遠景という距離によって両者を並べており、同じ主題の別の解き方になっている。

み雪:深く降り積もった雪。「み」は接頭語
山辺:山のあたり。山の近く
作者
よみ人しらず
出典
新古今和歌集
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