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春日野の下萌えわたる草の上に
つれなく見ゆる春の淡雪

歌の意味
春日野の一面に芽ぐみはじめた草の上に、素知らぬ顔で残って見える春の淡雪よ。
鑑賞
巻第一 春歌上 10

詞書「堀河院御時、百首歌たてまつりけるに、残りの雪の心をよみ侍りける」
 ここから若菜や春日野を舞台とする歌が続く。この歌は残雪を主題とし、萌え出た草の上になお白く残る淡雪を詠む。詞書によれば、堀河天皇の御代に詠進された百首歌のうち、「残りの雪」の題で詠まれたものである。
 作者の「権中納言国信」は源国信(一〇六九〜一一一一)である。源顕房の子で、権中納言に至った。堀河天皇の歌壇で活躍し、管絃にも通じていた。
 場面は早春、場所は大和国の歌枕である春日野(現在の奈良市の春日大社一帯)である。若菜摘みの地として古くから歌に詠まれてきた。
 直接の契機は「残雪」という題による詠である。この百首は堀河天皇の時代に十六人の歌人が同じ百の題によって詠進したもので、堀河百首と呼ばれる。
 堀河百首は題詠の型を定着させ、以後の百首歌の手本となった。

 初句「春日野の」で歌枕を掲げ、二句「下萌えわたる」で草が地面の下から一面に芽ぐむさまを示す。「わたる」は動詞に付いて、一面に〜する、の意を添える。
 三句「草の上に」で視線が地表へ上がり、下の句の淡雪へと受け渡される。緑の草と白い雪という色の対比がここで生まれる。
 四句「つれなく見ゆる」の「つれなし」は、素知らぬさま、平然としているさまをいう。草が春を告げているのに、雪はそれに構わず残っている、という擬人的な捉え方である。
 結句「春の淡雪」は体言止めである。「淡雪」は春に降る、消えやすい薄い雪をいう。冬の雪ではなく春の雪と言うことで、残っていながらもう冬のものではないという含みが生じる。
 草の芽と残雪を重ねる趣向は、第四首の宮内卿の歌「うすくこき野辺のみどりの若草に跡までみゆる雪のむらぎえ」(本集七十六番)とも通じる。

下萌ゆ:草が地面の下から芽ぐむ
わたる:動詞に付いて、一面に〜する意を添える
つれなし:素知らぬさまである。平然としている
淡雪:春に降る、薄くて消えやすい雪
作者
源国信
出典
新古今和歌集
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