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山深みなほ影寒し春の月
空かき曇り雪は降りつつ

歌の意味
山が深いので、春の月の光はやはり寒々としている。空はすっかり曇って、雪は降り続いている。
鑑賞
巻第一 春歌上 24

詞書「和歌所にて春山月といふ心をよめる」
 前歌に続いて春の夜の月を詠む。前歌が霞まぬ月を描いたのに対し、こちらは山中の月を取り上げ、雪の降る空に光が隠れるまでを描く。詞書によれば和歌所で「春山の月」という題によって詠まれた。
 作者の「越前」は後鳥羽院に仕えた女房歌人であるが、その伝は詳らかでない。「越前」は北陸道の国名に由来する女房名である。
 場面は早春の夜、場所は深い山である。
 直接の契機は和歌所での題詠である。

 初句「山深み」は、山が深いので、の意で、形容詞の語幹に「み」が付いて原因を表す。第三首の式子内親王の歌と同じ語法
同じ初句であり、巻頭の歌がここで反復される形になっている。
 二句「なほ影寒し」の「影」は月の光を指す。春になってもなお、と前置きして、光の冷たさを言う。
 三句「春の月」で主題が明示され、ここでいったん言い切られる。
 四句「空かき曇り」の「かき曇る」は、すっかり曇る、の意である。第四首の「かきくらし」と同じ接頭語「かき」を用い、空が一面に覆われるさまを示す。
 結句「雪は降りつつ」は継続の「つつ」で言い切らずに結ぶ。月が見えていた空が曇り、雪に閉ざされていくまでの時間の流れが、一首の中に収められている。前歌が一つの景を静止させて描いたのに対し、この歌は変化そのものを追っている。

影:月や日の光
かき曇る:空一面が曇る。「かき」は語調を整える接頭語
作者
越前
出典
新古今和歌集
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