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空はなほ霞みもやらず風冴えて
雪気に曇る春の夜の月

歌の意味
空はまだ霞みきらず、風は冴えて、雪もよいに曇っている春の夜の月よ。
鑑賞
巻第一 春歌上 23

詞書「家百首歌合に余寒の心を」
 ここから春の夜の月を詠む一連が始まる。この歌は「余寒」、すなわち立春を過ぎてなお残る寒さを主題とし、霞みきらない空と冴えた風の中の月を描く。詞書によれば良経の家で催された百首歌合に、余寒の題で詠まれた歌である。
 作者の「摂政太政大臣」は藤原良経である。巻頭歌の作者と同じで、本巻ではこれが二度目の登場となる。
 場面は立春を過ぎた早春の夜、場所は特定されない。
 直接の契機は「余寒」の題による詠である。
 良経の家では百首歌合をはじめ多くの歌の催しが行われ、俊成
定家
家隆らが集った。新古今歌壇の新風はこの場から育ったとされる。

 初句
二句「空はなほ霞みもやらず」の「やらず」は、〜しきらない、の意である。霞むには霞むが、まだ十分ではないという半端な状態を示す。春の徴である霞が、ここでは不完全なものとして置かれる。
 三句「風冴えて」の「冴ゆ」は、冷たく澄みきる意で、冬の季節感を担う語である。二句までの視覚に、ここで触覚が加わる。
 四句「雪気に曇る」の「雪気」は、今にも雪の降りそうな空模様をいう。霞ではなく雪の気配で曇っているという言い方で、春でありながら冬に引き戻される感覚が示される。
 結句「春の夜の月」は体言止めである。霞まず、冴え、雪気に曇る、という三つの否定的な条件を重ねた末に月が据えられ、その月がおぼろにならない春の月として印象づけられる。
 春の夜の月といえば朧月として詠まれるのが常であり、その通念をあえて外している点にこの歌の主張がある。

余寒:立春を過ぎてもなお残る寒さ
やらず:〜しきらない。十分に〜しない
冴ゆ:冷たく澄みきる
雪気:今にも雪が降り出しそうな空模様
作者
藤原良経
出典
新古今和歌集
その他の歌