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霞立つ末の松山ほのぼのと
波に離るる横雲の空

歌の意味
霞の立つ末の松山に、ほのぼのと明けて、波から離れていく横雲の空よ。
鑑賞
巻第一 春歌上 37

詞書「摂政太政大臣家百首歌合に春のあけぼのといふ心をよみ侍りける」
 ここから春の曙を詠む二首が続く。この歌は陸奥の歌枕である末の松山を舞台に、夜明けの海と空を描く。詞書によれば良経の家で催された百首歌合に、「春の曙」の題で詠まれた。第二十三首と同じ催しである。
 作者の藤原家隆は第十七首の作者と同じで、本巻ではこれが二度目の登場となる。
 場面は春の夜明け、場所は陸奥国の歌枕である末の松山(現在の宮城県多賀城市)である。海に臨む地で、波が越えないことの喩えとして古くから詠まれてきた。
 直接の契機は「春の曙」の題による詠である。

 初句「霞立つ」で春の徴を示し、二句「末の松山」で場所を定める。末の松山は『古今和歌集』の東歌「君をおきてあだし心をわが持たば末の松山波も越えなむ」以来、波が越えないことを誓いの喩えとする歌枕であり、恋の文脈で用いられてきた。
 三句「ほのぼのと」は夜がほのかに明けるさまで、第二首の後鳥羽院歌の初句と同じ語である。
 四句「波に離るる」は、水平線の波から雲が離れていくさまをいう。末の松山に伴う「波」の語を、恋の誓いではなく夜明けの実景として用い直しているところに本歌取りの工夫がある。
 結句「横雲の空」は体言止めである。「横雲」は横に長く引く雲で、夜明けの空にかかるものをいう。
 次の第三十八首も「横雲の空」で結んでおり、結句を同じくする二首が並べて置かれている。

すゑのまつやま:陸奥国の歌枕。現在の宮城県多賀城市
よこぐも:横に長く引く雲。夜明けの空にかかる
作者
藤原家隆
出典
新古今和歌集
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