世を厭ふ人とし聞けばかりの宿に
心留むなと思ふばかりぞ
- 歌の意味
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あなたが世を厭い捨てた人だと聞いているので、仮の宿に心を留めなさるなと思うばかりなのです。
- 鑑賞
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巻第十 羈旅歌 979
詞書「返し」
江口の宿をめぐる西行と遊女妙の贈答の二首目である。世を捨てた人と聞くので、仮の宿に心を留めるなと思っただけだと、西行の歌に切り返す。詞書によれば、前歌への返歌である。
作者の妙は、摂津国江口の遊女である。
場面は天王寺参詣の途中のにわか雨の折、場所は摂津国の江口である。
直接の契機は、宿を断られた西行から前歌を詠みかけられたことである。
この贈答は、のちに謡曲『江口』の題材となった。
初句「世を厭ふ」は、世を厭い捨てた、の意である。前歌の「世の中を厭ふ」を受けて、相手を出家の身として示す。
二句「人とし聞けば」は、人であると聞くので、の意である。「し」は強意の助詞で、已然形に「ば」が付いて理由を表す。
三句「かりの宿に」の「かり」には、宿を「借り」の意と、「仮」の意が掛けられている。前歌の「かりの宿り」をそのまま受けた語である。六音の字余りの句である。
四句「心留むなと」は、心を留めなさるなと、の意である。「な」は禁止を表す。前歌の「惜しむ」を受け、惜しんだのではなく、出家の人の心を仮の宿に留めさせまいとしたのだと言い返している。
結句「思ふばかりぞ」は、思うばかりなのです、の意である。係助詞「ぞ」で強く言い切って結ぶ。前歌が世を厭う理によって宿を惜しむ相手を責めたのに対し、この歌は同じ世を厭う理を逆手に取り、仮の宿に執着するなと出家の人を諭しており、贈答の中で理屈が反転している。
かり:宿を「借り」の意と、「仮」の意を掛ける
とむ:心を留める
- 作者
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妙
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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