思ひ置く人の心に慕はれて
露分くる袖の帰りぬるかな
- 歌の意味
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思いを残してきた人の心に引き止められるように慕われて、露を分けて行く私の袖は、故郷の方へひるがえり戻ってしまうことだ。
- 鑑賞
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巻第十 羈旅歌 988
詞書「旅歌とて」
故郷と都を思って巻を結ぶ一連の四首目である。思いを残してきた人の心に慕われて、露を分けて行く袖がひるがえって故郷の方へ戻ってしまうと、旅立ちの後ろ髪を引かれる思いを詠む。詞書によれば、旅の歌として詠まれた。
作者名は記されておらず、前歌に続いて西行の作である。西行は俗名を佐藤義清といい、鳥羽院に北面の武士として仕えたのち出家した平安時代後期の歌人である。諸国を旅して歌を詠み、家集に『山家集』がある。
場面は旅立って間もない道中、場所は露の置く野の道である。
直接の契機は「旅」を題として詠んだことである。
初句「思ひ置く」は、思いを残してきた、の意である。本巻の第九百三十四首の「思ひおきつ」と同じく、後にした地に心を残す旅人が詠まれる。
二句「人の心に」は、故郷の人の心に、の意である。
三句「慕はれて」は、慕われて、引き止められて、の意である。故郷の人の思いに引かれるさまが示される。
四句「露分くる袖の」は、露を分けて行く袖の、の意である。八音の字余りの句で、露の置く野を進む旅人の袖が示される。
結句「帰りぬるかな」は、ひるがえり戻ってしまうことだ、の意である。袖がひるがえる意と、心が故郷へ帰る意とが重ねられている。前歌が老いてなお旅を続ける命を詠んだのに対し、この歌は進もうとしても袖が故郷へ帰ってしまう心を詠み、本巻の第九百六十五首の「なほ故郷を顧みる」と同じく、故郷への思いが巻の終わりに再び示されている。
したふ:慕う、後を追う
わく:押し分けて進む
- 作者
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西行
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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