故郷に帰らむことはあすか川
渡らぬ先に淵瀬たがふな
- 歌の意味
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故郷に帰るのは明日である。飛鳥川よ、私が渡らないうちに、淵と瀬を入れ替えてくれるな。
- 鑑賞
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巻第十 羈旅歌 986
詞書「泊瀬に詣でて帰さに飛鳥川のほとりに宿りて侍りける夜よみ侍りける」
故郷と都を思って巻を結ぶ一連の二首目である。故郷に帰るのは明日だ、飛鳥川よ、渡らぬうちに淵と瀬を変えてくれるなと、帰路の心を詠む。詞書によれば、初瀬に参詣した帰りに、飛鳥川のほとりに泊まった夜に詠んだ歌である。
作者の素覚は、平安時代後期の僧で歌人である。
場面は初瀬詣での帰りの夜、場所は大和国の飛鳥川のほとりである。
直接の契機は、初瀬詣での帰りに飛鳥川のほとりに宿ったことである。
『古今和歌集』雑歌のよみ人しらずの歌「世の中は何か常なる飛鳥川昨日の淵ぞ今日は瀬になる」を踏まえ、淵と瀬の移り変わる飛鳥川の性質を取っている。
初句「故郷に」は、故郷に、の意である。前歌が故郷もないと言い切ったのに対し、ここでは故郷へ帰る旅が詠まれる。
二句「帰らむことは」は、帰るであろうことは、の意である。旅の帰路にある心が示される。
三句「あすか川」の「あすか」には、「明日か」の意と、大和国の「飛鳥川」が掛けられている。帰るのは明日であると、川の名に託して示す。巻頭の第八百九十六首で元明天皇が後にした「明日香の里」と同じ地であり、羈旅歌の巻が明日香を離れる旅に始まり、明日香から故郷へ帰る旅へと至っている。
四句「渡らぬ先に」は、渡らないうちに、の意である。明日の渡りまでの間を示す。
結句「淵瀬たがふな」は、淵と瀬を入れ替えてくれるな、の意である。「な」は禁止を表す。昨日の淵が今日は瀬になるという古歌の通念を踏まえ、帰路の渡りを妨げるなと川に呼びかけている。
あすか:「明日か」の意と、大和国の「飛鳥川」を掛ける
ふちせ:深い淵と浅い瀬
たがふ:入れ替わる、違える
- 作者
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素覚
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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