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春立ちて猶ふる宮は梅の花
咲くほどもなく散るかとぞ見る

歌の意味
春になってもなお雪の降る古い宮では、梅の花が咲くまもなく散っているのかと見える。
鑑賞
巻第一 春歌 8

詞書「定文が家歌合に」
 立春を過ぎてもなお雪の降る古い宮の庭で、舞い落ちる雪を、梅の花が咲いたそばから散っているのかと見なした歌である。古びた宮のひっそりとした景に、雪と梅の見立てを重ねている。詞書によれば、平定文の家の歌合に出された歌で、本巻の第一首と同じ歌合での作である。
 作者の「みつね」は凡河内躬恒である。古今和歌集の撰者の一人で、紀貫之と並び称された。三十六歌仙の一人に数えられる。
 なお本文の二句は「猶ふる宮は」とあり、読み仮名の行の「なほふるゆきは」と一致しない。ここでは本文の表記に従い、「ふる」に「古る」と「降る」を掛けたものとして解する。

 初句「春立ちて」は前歌と同じ初句で、立春後の雪景色を詠む一連をなす。
 二句「猶ふる宮は」は、なお古びた宮は、の意で、「ふる」に古い意と雪が降る意を掛ける。
 三句「梅の花」は、雪と見まがう花として据えられ、本巻の第九首、第十二首と続く雪と梅の見立ての先駆けとなる。
 四句「咲くほどもなく」は、咲いたかと思う間もなく、の意である。
 結句「散るかとぞ見る」は、「ぞ」の係り結びで連体形「見る」で結ぶ。降る雪を散る花と見なす見立てを強く示す。

ふる:年月がたって古くなる意と、雪が降る意を掛ける
ふるみや:古びた宮。荒れた古い宮殿
作者
凡河内躬恒
出典
拾遺和歌集
前の歌
春立ちて朝の原の雪見れば まだふる年の心地こそすれ
次の歌
わが宿の梅にならひてみ吉野の 山の雪をも花とこそ見れ