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春立ちて朝の原の雪見れば
まだふる年の心地こそすれ

歌の意味
春になってから朝の原の雪を見ると、まだ雪の降る旧年のままのような気持ちがすることだ。
鑑賞
巻第一 春歌 7

詞書「題しらず」
 春が立ったのに朝の原にはなお雪が降り積もっていて、まだ去年の冬のままであるかのように感じられるという歌である。暦の上の春と目の前の冬景色とのずれを、「ふる」の掛詞によって巧みに言い表している。
 作者の「平祐挙」は平安時代中期の歌人で、伝記の詳細は明らかでない。

 初句「春立ちて」は、立春を迎えての意である。次歌も同じ初句で始まり、立春後もなお残る雪を詠む二首が並べられている。
 二句「朝の原の」は、大和国の歌枕である朝の原で、「朝」の字面が立春の朝を思わせる。本巻の第十八首にも朝の原が詠まれる。
 三句「雪見れば」は、雪を見るとの意で、「ば」は確定条件を表す。
 四句「まだふる年の」は、「ふる」に雪が「降る」意と、年が「古る」意を掛ける掛詞である。降り続く雪が、過ぎ去った旧年の名残に重ねられる。
 結句「心地こそすれ」は、「こそ」と已然形「すれ」の係り結びで、旧年のままのような気持ちを強調している。

ふるとし:前の年。旧年。ここでは雪が降る意を掛ける
あしたのはら:大和国の歌枕。現在の奈良県北葛城郡王寺町付近の丘陵とされる
作者
平祐挙
出典
拾遺和歌集
前の歌
氷だにとまらぬ春の谷風に まだうちとけぬ鶯の声
次の歌
春立ちて猶ふる宮は梅の花 咲くほどもなく散るかとぞ見る