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禊する今日唐崎におろす網は
神のうけひくしるしなりけり

歌の意味
禊をする今日、唐崎で下ろす網は、網の浮けを引くように、神が祈りを受け入れてくださるしるしであったのだ。
鑑賞
巻第十 神楽歌 595

詞書「粟田右大臣家の障子に、唐崎に祓したる所に網引く形描ける所」
 禊をする今日、唐崎で下ろす網は、神が祈りを受け入れてくださるしるしであったと詠む歌である。詞書から、粟田右大臣藤原道兼の家の障子絵に、唐崎で祓をしている所に網を引く様子が描かれた場面に添えた歌とわかる。網の「浮け」を「引く」ことに、神が「受け引く」を掛け、祓の場の網引きを神の承諾のしるしと見ている。前歌の第五百九十四首に続き、禊を詠む歌である。
 作者の平祐挙は、平安中期の官人、歌人である。粟田右大臣は藤原道兼で、藤原兼家の子であり、右大臣を経て関白に至った。唐崎は近江国の琵琶湖のほとりで、祓の名所として知られる。

 初句「禊する」は、禊をする、の意で、前歌の第五百九十四首の二句「禊幾世に」と、禊の語を共有している。
 二句「今日唐崎に」は、今日、唐崎で、の意である。
 三句「おろす網は」は、下ろす網は、の意で、六音の字余りの句である。
 四句「神のうけひく」は、「うけひく」が網の浮けを「引く」意と、神が祈りを「受け引く」意を掛ける掛詞である。
 結句「しるしなりけり」は、しるしであったのだ、の意で、「けり」は気づきの詠嘆を表す。

うけひく:網の「浮け(浮き)」を引く意と、承諾する意の「受け引く」を掛ける
からさき:唐崎。近江国の琵琶湖のほとりの地。祓の名所
はらへ:祓。罪や穢れを除く神事
作者
平祐挙
出典
拾遺和歌集
前の歌
大淀の禊幾世になりぬらん 神さびにたる浦の姫松
次の歌
ちはやぶる神の保てる命をば 誰がためにか長くと思はん