- 表題
- -
- 紫式部日記
紫式部日記 - 紫式部
女郎花盛りの色を見るからに
露の分きける身こそ知らるれ
盛りを迎えた女郎花の美しい色を見るにつけても、露が分け隔てをして恵みを置いてくれなかったわが身のほどが、おのずと思い知られることだ。
紫式部日記 - 紫式部
めづらしき光さしそふさかづきは
もちながらこそ千代もめぐらめ
皇子誕生というすばらしい光が新たに加わったこの盃は、満月の欠けないままのように、人々の手に持たれながら千年の後までも巡り続けることだろう。
紫式部日記 - 紫式部
水鳥を水の上とやよそに見む
われも浮きたる世を過ぐしつつ
水鳥を、水の上で無心に遊んでいるものと、自分とは関わりのないものとして見ることができようか。私もまた、浮いたように落ち着かない、憂いの多い世を過ごしているのだから。
紫式部日記 - 小少将の君
雲間なくながむる空もかきくらし
いかにしのぶる時雨れなるらむ
雲の切れ間もなく物思いにふけって見つめている空までが一面に暗くなって、いったい誰を恋い偲んで降る時雨なのだろう。
紫式部日記 - 紫式部
ことわりの時雨れの空は雲間あれど
ながむる袖ぞ乾く間もなき
この季節には当然の時雨の空には、それでも雲の切れ間があるけれど、物思いにふけって見つめる私の袖は、涙で乾く間もないことだ。
紫式部日記 - 紫式部
いかにいかがかぞへやるべき八千歳の
あまり久しき君が御代をば
五十日(いか)の祝いの今日、いったいどのように数え尽くすことができようか。八千年にも余るほど久しく続く若宮の御代を。
紫式部日記 - 大納言の君
うちはらふ友なきころの寝覚めには
つがひし鴛鴦ぞ夜半に恋しき
羽に置いた霜を払い合う友のいないこの頃、夜中にふと目覚めると、つがいの鴛鴦のように寄り添っていたあなたが恋しく思われる。
紫式部日記 - 紫式部
おほかりし豊の宮人さしわきて
しるき日蔭をあはれとぞ見し
大勢いた豊明の節会の宮人たちの中で、とりわけ目立っていた日蔭のかずらを付けたあなたの姿を、しみじみと感慨深く拝見したことだ。
紫式部日記 - 紫式部
年暮れてわが世更け行く風の音に
心の中のすさまじきかな
今年も暮れて、夜が更けていくように私の齢も老けていく。吹きすさぶ風の音を聞くにつけ、心の中は寒々として荒涼としていることだ。
紫式部日記 - 藤原道長
すきものと名にしたてれば見る人の
折らで過ぐるはあらじとぞ思ふ
酸っぱい梅の実ならぬ色好みと評判が立っているのだから、あなたを見た人で、枝を折らずに、つまり口説かずに通り過ぎる者はいないだろうと思う。
紫式部日記 - 紫式部
人にまだ折られぬものをたれかこの
すきものぞとは口ならしけむ
私はまだ誰にも折られたことがない、つまり誰のものにもなったことがないのに、いったい誰が、この私を色好みだなどと言いふらしたのだろうか。