古典和歌stream

住吉の岸の藤波我が宿の
松のこずゑに色はまさらじ

歌の意味
名高い住吉の岸に咲く藤の花房も、我が家の松の梢にかかる藤に、色はまさらないだろう。
鑑賞
巻第二 夏歌 84

詞書「円融院御時御屏風歌」
 歌枕として名高い住吉の岸の藤も、我が家の松の梢に咲きかかる藤の色にはかなうまい、と自邸の藤を誇らしく詠む。名所の藤を引き合いに出して身近な藤を称えることで、屏風の家の繁栄を祝う気持ちを込めている。詞書によれば、円融天皇の御代の屏風歌である。
 作者の「平かねもり」は平兼盛である。光孝天皇の流れをくむ平氏の出で、平安時代中期の歌人である。天徳四年の内裏歌合での活躍で知られ、三十六歌仙に数えられる。

 初句「住吉の」は、摂津国の歌枕で、松の名所として知られる住吉をいう。
 二句「岸の藤波」は、住吉の岸に咲く藤の花房をいう。「藤波」は風に揺れる藤の花房を波に見立てた語で、岸の縁語ともなっている。
 三句「我が宿の」は、名所の住吉と対比して、身近な我が家を持ち出す。遠い名所と近い自邸を比べる遠近の対比が一首の骨組みとなる。
 四句「松のこずゑに」は、我が家の松の梢に藤がかかっていることをいう。前歌の「松にとのみも」を受け、松と藤の取り合わせが続く。
 結句「色はまさらじ」は、色はまさらないだろう、の意で、「じ」は打消推量の助動詞である。名所の藤より我が家の藤がすぐれていることを婉曲に述べる。

ふぢなみ:藤の花房が風に揺れるさまを波に見立てていう語
こずゑ:木の枝の先。梢
作者
平兼盛
出典
拾遺和歌集
前の歌
夏にこそ咲きかかりけれ藤の花 松にとのみも思ひけるかな
次の歌
紫の藤咲く松のこずゑには もとの緑も見えずぞありける