夏にこそ咲きかかりけれ藤の花
松にとのみも思ひけるかな
- 歌の意味
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藤の花は夏にまで咲きかかるものだったのだ。松にばかりかかって咲くものだとばかり思っていたことよ。
- 鑑賞
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巻第二 夏歌 83
詞書「百首歌中に」
藤の花は松にかかって咲くものとばかり思っていたが、季節の上では夏にまで咲きかかるものだったと気づいた驚きを詠む。「かかる」という語を、松に絡んで咲く意と、春から夏にかけて咲く意とに働かせた機知の歌である。詞書によれば、百首歌の中の一首であり、前々歌と同じく重之百首に含まれる歌である。
作者の「しけゆき」は源重之である。清和源氏の出で、平安時代中期の歌人である。冷泉天皇の東宮時代に帯刀先生として仕え、のちに地方官を歴任した。三十六歌仙に数えられる。
初句「夏にこそ」は、夏にまで、の意で、「こそ」は係助詞であり、二句の「けれ」で結ぶ係り結びとなる。本歌から第八十八首まで藤の花の歌が続き、その一連の始まりとなる。
二句「咲きかかりけれ」は、咲いてかかるものであったのだ、の意で、「けれ」は気づきの「けり」の已然形で、初句の「こそ」を受けて結ぶ。ここで句切れとなる。
三句「藤の花」は、晩春から初夏にかけて咲く花で、本歌では夏の花として取り上げられている。
四句「松にとのみも」は、松にかかるものとばかり、の意である。藤が松に絡んで咲くという取り合わせは、次歌以下の第八十四首、第八十五首でも詠まれる。
結句「思ひけるかな」は、そう思っていたことよ、の意で、これまでの思い込みを振り返る詠嘆を表す。
ふぢ:藤。晩春から初夏に紫の花房を垂らす。松に絡んで咲く姿が好まれた
- 作者
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源重之
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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花散るといとひしものを夏衣 たつや遅きと風を待つかな
- 次の歌
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住吉の岸の藤波我が宿の 松のこずゑに色はまさらじ