春日野に朝鳴く雉の羽音は
雪の消え間に若菜摘めとや
- 歌の意味
-
春日野で朝に鳴く雉の羽音は、雪の消えた所で若菜を摘めと言っているのだろうか。
- 鑑賞
-
巻第一 春歌 6
春日野で朝鳴く雉の羽ばたきの音を、雪の消え間で若菜を摘めという促しと聞きなした歌である。早春の野の静けさの中に響く羽音が、若菜摘みの季節の到来を告げている。
前歌が若菜を摘めない山里を詠んだのに対し、こちらは若菜摘みを促す野の景で、対照的に配されている。
初句「春日野に」は、奈良の春日野で、若菜摘みの名所として古くから詠まれた歌枕である。
二句「朝鳴く雉の」は、早朝に鳴く雉で、春の野の鳥として詠まれる。
三句「羽音は」は、雉が鳴くときに羽を打ち鳴らす音をとらえたもので、声ではなく羽音に注目した点に工夫がある。字余りとなっている。
四句「雪の消え間に」は、雪が消えて地面が見えている所である。前歌の初句「雪消えば」が仮定であったのに対し、ここでは実際に雪の消え間が現れている。
結句「若菜摘めとや」は、「とや」の下に「言ふ」などが省略された形で、雉の羽音を若菜摘みの誘いと聞く見立てである。
きじ:雉。春の野で鳴く鳥
きえま:雪などが消えて地面が見えている所
- 作者
-
源重之
- 出典
-
詞花和歌集
- 前の歌
-
雪消えばゑぐの若菜も摘むべきに 春さへ晴れぬ深山辺の里
- 次の歌
-
万代のためしに君がひかるれば 子の日の松もうらやみやせむ