万代のためしに君がひかるれば
子の日の松もうらやみやせむ
- 歌の意味
-
万代も続く長寿の例としてあなたが引き合いに出されるので、子の日に引かれる松もあなたをうらやむことだろうか。
- 鑑賞
-
巻第一 春歌 7
正月の子の日に小松を引いて長寿を祝う行事を踏まえ、長寿の手本として引き合いに出される相手を、引かれる松さえうらやむだろうと祝った歌である。
「引く」の両義を生かした祝意の強い一首で、次歌とともに子の日の歌が二首並んでいる。
初句「万代の」は、限りなく長い年月の意で、長寿を祝う言葉である。
二句「ためしに君が」の「ためし」は、手本となる前例の意である。祝う相手を長寿の例とする。
三句「ひかるれば」は、例として引き合いに出される意と、子の日に小松が引かれる意を掛ける掛詞である。「るれ」は受身の助動詞「る」の已然形で、「ば」で確定条件を表す。
四句「子の日の松も」は、正月初子の日に野で小松を引く行事の松である。次歌の初句「子の日すと」とともに子の日の歌が続く。
結句「うらやみやせむ」は、係助詞「や」を受けて推量の助動詞「む」の連体形で結ぶ係り結びである。本来長寿の象徴である松が人をうらやむという逆転の機知が見どころである。
ひかる:例として引き合いに出される意と、子の日に小松が引かれる意を掛ける
ねのひ:正月初めの子の日。野に出て小松を引き、長寿を祝った
ためし:手本となる前例
- 作者
-
赤染衛門
- 出典
-
詞花和歌集
- 前の歌
-
春日野に朝鳴く雉の羽音は 雪の消え間に若菜摘めとや
- 次の歌
-
子の日すと春の野ごとに尋ぬれば 松にひかるる心地こそすれ