薄く濃く乱れて咲ける藤の花
等しき色はあらじとぞ思ふ
- 歌の意味
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薄い色や濃い色が入り乱れて咲いている藤の花は、同じ色のものは一つもないだろうと思う。
- 鑑賞
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巻第二 夏歌 86
詞書「延喜御時、飛香舎にて藤の花の宴侍りける時に」
濃淡さまざまに入り乱れて咲く藤の花を見て、一つとして同じ色のものはないだろうと、その色の多彩さをたたえた歌である。宮中の藤の宴の席で、花の豊かさを称えることで、宴の主や御代の繁栄を祝う心が込められている。詞書によれば、醍醐天皇の延喜の御代に、藤壺とも呼ばれた飛香舎で藤の花の宴が催された折の歌である。
作者の「小野宮太政大臣」は藤原実頼である。藤原忠平の長男で、摂政、太政大臣に至った。邸の名から小野宮殿と呼ばれ、有職故実の小野宮流の祖とされる。
初句「薄く濃く」は、藤の花の色の濃淡をいう。前歌が紫一色で松の緑を覆う景を詠んだのに対し、本歌は同じ紫の中の濃淡に目を向けている。
二句「乱れて咲ける」は、入り乱れて咲いている、の意で、「る」は存続の助動詞「り」の連体形である。
三句「藤の花」は、宴の主題である飛香舎の藤をいう。飛香舎は庭に藤が植えられていたことから藤壺とも呼ばれた。
四句「等しき色は」は、同じ色は、の意である。一つ一つの花房が異なる色を見せることをいう。
結句「あらじとぞ思ふ」は、ないだろうと思う、の意で、「じ」は打消推量の助動詞であり、「ぞ」の係り結びにより連体形の「思ふ」で結ぶ。
ひぎやうしや:飛香舎。平安京内裏の殿舎の一つで、庭に藤が植えられていたことから藤壺とも呼ばれた
- 作者
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藤原実頼
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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紫の藤咲く松のこずゑには もとの緑も見えずぞありける
- 次の歌
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手も触れで惜しむかひなく藤の花 底に映れば波ぞ折りける