手も触れで惜しむかひなく藤の花
底に映れば波ぞ折りける
- 歌の意味
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手も触れずに大切に惜しんでいたかいもなく、藤の花は水底に映っているので、波が折ってしまったことだ。
- 鑑賞
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巻第二 夏歌 87
詞書「題しらず」
手折らずに惜しんでいた藤の花も、水に映った影を波が揺らして折ってしまったと詠む。水面に映る藤の影が波で砕けるさまを、波が花を折ったと見立てた機知の歌である。
作者の「躬恒」は、古今和歌集の撰者の一人で、紀貫之と並び称された平安時代前期の歌人である。三十六歌仙に数えられる。
初句「手も触れで」は、手も触れずに、の意で、「で」は打消の接続助詞である。花を手折らずに大切にしてきたことを示す。
二句「惜しむかひなく」は、惜しんだかいもなく、の意で、下の句の意外な結果を導く。
三句「藤の花」は、水辺に咲く藤をいう。前歌までの松にかかる藤から、水辺の藤へと場面が移る。
四句「底に映れば」は、水底に映っているので、の意である。次歌の第八十八首でも水底に映る藤が詠まれ、水と藤の取り合わせが続く。
結句「波ぞ折りける」は、波が折ってしまった、の意で、「ぞ」の係り結びにより連体形の「ける」で結ぶ。人が折らずにおいた花を波が折るという、人と波の対比で一首を結ぶ。
をる:折る。花の枝を手で折り取る
- 作者
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凡河内躬恒
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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薄く濃く乱れて咲ける藤の花 等しき色はあらじとぞ思ふ
- 次の歌
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たこの浦の底さへにほふ藤波を かざして行かん見ぬ人のため