古典和歌stream

山がつと人は言へども郭公
まづ初声は我のみぞ聞く

歌の意味
山に住む卑しい者だと人は言うけれども、ほととぎすの初声だけは、まず私だけが聞くのだ。
鑑賞
巻第二 夏歌 103

詞書「女四のみこの家歌合に」
 人からは山がつと見下されても、ほととぎすの初声だけは真っ先に自分だけが聞けるのだと、山住まいの特権を誇らしく詠んだ歌である。卑下と自負を一首の中で転じさせ、都人に対する山住みの者の優位を軽妙に示している。詞書によれば、醍醐天皇の皇女で女四宮と呼ばれた勤子内親王の家の歌合に出された歌とされる。
 作者の「坂上是則」は、平安時代前期の歌人である。坂上田村麻呂の子孫とされ、坂上望城の父にあたる。三十六歌仙に数えられる。

 初句「山がつと」は、山に住む卑しい者と、の意である。本巻の第九十三首にも「山がつ」の語が見える。
 二句「人は言へども」は、人は言うけれども、の意で、「ども」は逆接の接続助詞である。前歌の都人と対照的に、山に住む者の立場から詠んでいる。
 三句「郭公」は、山で真っ先に鳴くほととぎすをいう。
 四句「まづ初声は」は、真っ先に、その初声は、の意である。本巻の第九十六首、第百首に続き、初声が詠まれている。
 結句「我のみぞ聞く」は、私だけが聞く、の意で、「ぞ」の係り結びにより連体形の「聞く」で結ぶ。前歌が都人は待っていないだろうと詠んだのに続き、本歌は山に住む自分こそが初声を独占すると詠み、二首が呼応している。

やまがつ:山里に住む身分の低い人。きこりや猟師など
作者
坂上是則
出典
拾遺和歌集
前の歌
都人寝で待つらめや郭公 今ぞ山辺を鳴きて出づなる
次の歌
さ夜更けて寝覚めざりせば郭公 人づてにこそ聞くべかりけれ