夏の夜は浦島の子が箱なれや
はかなくあけて悔しかるらん
- 歌の意味
-
夏の夜は浦島の子の玉手箱なのだろうか。あっけなく明けてしまって、箱を開けてしまったように悔しいことだ。
- 鑑賞
-
巻第二 夏歌 122
詞書「題しらず」
あっけなく明けてしまう夏の夜を、浦島の子が開けて悔やんだ玉手箱にたとえた歌である。「あけて」に夜が明ける意と箱を開ける意を掛け、短夜の惜しさを浦島伝説に重ねた機知の一首である。
作者の「中務」は、平安時代中期の女流歌人で、敦慶親王と伊勢の娘である。母の伊勢とともに三十六歌仙に数えられる。
初句「夏の夜は」は、前歌の初句「夏の夜の」と呼応し、短い夏の夜を主題とする。
二句「浦島の子が」は、浦島伝説の主人公である浦島の子をいう。竜宮から持ち帰った箱を開けたことで一瞬に年老いたという伝説を踏まえる。
三句「箱なれや」は、箱なのだろうか、の意で、「や」は疑問の係助詞であり、結句の「らん」で結ぶ係り結びとなる。
四句「はかなくあけて」は、「あけて」に夜が明ける意と箱を開ける意を掛けた掛詞である。前歌の「明けもこそすれ」が危ぶんだ夜明けが、本歌では実際に訪れており、二首が時の前後をなしている。
結句「悔しかるらん」は、悔しいのだろうか、の意で、「らん」は現在推量の助動詞の連体形で、三句の「や」を受けて結ぶ。
うらしまのこ:浦島伝説の主人公。竜宮から持ち帰った箱を開けて老人になったと伝える
あく:夜が明ける意と、箱を開ける意を掛ける
- 作者
-
中務
- 出典
-
拾遺和歌集
- 前の歌
-
夏の夜の心を知れるほととぎす はやも鳴かなん明けもこそすれ
- 次の歌
-
夏来れば深草山の郭公 鳴く声しげくなりまさるなり