- 歌の意味
-
夏山の木陰がよく茂っているので、道を行く人も立ち止まるのだろうか。
- 鑑賞
-
巻第二 夏歌 130
詞書「延喜御時御屏風に」
夏山の木陰が深く茂っているので、道を行く旅人も立ち止まって涼むのだろうかと思いやる歌である。屏風に描かれた道行く人の姿に、夏山の木陰の心地よさを読み取っている。詞書によれば、醍醐天皇の延喜の御代の屏風に添えた歌である。
作者の「つらゆき」は紀貫之である。古今和歌集の撰者の中心人物で、仮名序を執筆し、土佐日記を著した。三十六歌仙に数えられる。
初句「夏山の」は、前歌の三句と同じ語で、夏山の木陰を主題とする二首が並ぶ。
二句「影を茂みや」は、木陰が茂っているので、の意で、「を〜み」は原因や理由を表す語法である。「や」は疑問の係助詞で、結句の「らん」で結ぶ係り結びとなる。
三句「玉鉾の」は、「道」にかかる枕詞である。
四句「道行く人も」は、道を行く旅人も、の意で、「も」は前歌の旅人と同じく、という添加の意を響かせる。
結句「立ちとまるらん」は、立ち止まるのだろうか、の意で、「らん」は現在推量の助動詞の連体形で結ぶ。前歌が旅人自身の立ち去りがたさを詠んだのに対し、本歌は道行く他の人を思いやる立場から詠んでおり、内と外から同じ主題をとらえている。
たまほこ:「道」「里」にかかる枕詞
- 作者
-
紀貫之
- 出典
-
拾遺和歌集
- 前の歌
-
行く末はまだ遠けれど夏山の 木の下陰ぞ立ち憂かりける
- 次の歌
-
松影の岩井の水をむすびあげて 夏なき年と思ひけるかな