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秋風に夜の更けゆけば天の川
川瀬に波の立ち居こそ待て

歌の意味
秋風の吹く中で夜が更けていくので、天の川の川瀬に波が立ち騒ぐように、立ったり座ったりして待っていることだ。
鑑賞
巻第三 秋歌 143

詞書「延喜御時屏風歌」
 秋風の吹く中、七夕の夜が更けていくにつれて、天の川の川瀬に波が立ち騒ぐように、立ったり座ったりと落ち着かずに逢う人を待つさまを詠む歌である。波の立ち居に待つ人の立ち居を重ね、逢瀬を待ちわびる心のはやりを表している。詞書によれば、前歌と同じく醍醐天皇の延喜の御代の屏風歌である。
 作者の「つらゆき」は紀貫之である。古今和歌集の撰者の中心人物で、仮名序を執筆し、土佐日記を著した。三十六歌仙に数えられる。

 初句「秋風に」は、秋風の吹く中で、の意で、前歌の三句の秋風を受け継いでいる。
 二句「夜の更けゆけば」は、夜が更けていくので、の意である。本巻の第百四十七首の結句にも同じ「夜の更けゆけば」が用いられ、七夕の夜更けを詠む歌が続く。
 三句「天の川」は、七夕の逢瀬の場である天の川をいう。次歌の第百四十四首、第百四十五首も「天の川」で始まる。
 四句「川瀬に波の」は、川の浅瀬に立つ波をいう。
 結句「立ち居こそ待て」は、波の立ち居と、待つ人の立ったり座ったりする落ち着かないさまとを重ねた表現である。「こそ」は係助詞で、已然形の「待て」で結ぶ。次歌の結句「年にこそ待て」と同じ「こそ待て」の形で結ばれ、二首が並んでいる。

かはせ:川の浅瀬。川瀬
たちゐ:立ったり座ったりすること。落ち着かないさま。立ち居
作者
紀貫之
出典
拾遺和歌集
前の歌
彦星の妻待つ宵の秋思に 我さへあやな人ぞ恋しき
次の歌
天の川遠き渡りにあらねども 君が船出は年にこそ待て