天の川遠き渡りにあらねども
君が船出は年にこそ待て
- 歌の意味
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天の川は遠い渡し場というわけではないけれども、あなたの船出は一年にただ一度と待つことだ。
- 鑑賞
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巻第三 秋歌 144
詞書「題しらず」
天の川は遠く隔たった渡し場ではないのに、彦星の船出は年に一度しかなく、それを一年がかりで待たねばならないと、織女の立場から詠む歌である。距離の近さと逢う時の遠さとの対比に、待つ身のもどかしさが表れている。
作者の「柿本人まろ」は柿本人麻呂である。飛鳥時代の宮廷歌人で、万葉集を代表する歌人として歌聖と仰がれる。三十六歌仙の一人に数えられる。
万葉集巻十の七夕の歌の中に、ほぼ同じ形の歌が見える。
初句「天の川」は、前歌の三句を受け、七夕の逢瀬の場を示す。
二句「遠き渡りに」は、遠い渡し場で、の意である。
三句「あらねども」は、ないけれども、の意で、「ども」は逆接の接続助詞である。
四句「君が船出は」は、彦星の船出をいう。万葉集の七夕の歌では、彦星が船で天の川を渡るとされることが多い。
結句「年にこそ待て」は、一年に一度と待つことだ、の意で、「こそ」の係り結びにより已然形の「待て」で結ぶ。前歌の「立ち居こそ待て」が一夜の中で待つ時間を詠んだのに対し、本歌は一年という尺度で待つ時間を詠み、同じ主題を別の尺度でとらえている。
わたり:川などを渡る所。渡し場
ふなで:船が港や岸を出ること。船出
- 作者
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柿本人麻呂
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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秋風に夜の更けゆけば天の川 川瀬に波の立ち居こそ待て
- 次の歌
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天の川去年の渡りのうつろへば 浅瀬踏む間に夜ぞ更けにける