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天の川水さへに照る舟泊てて
舟なる人は妹と見えきや

歌の意味
天の川の水までも照り輝く舟が岸に着いて、その舟にいる人は、妻と逢うことができただろうか。
鑑賞
巻第十 秋雑歌 1996

詞書「秋雑歌 七夕」
 天の川の水面まで照り輝く舟が着き、舟の人すなわち彦星は妻の織女と逢えたのだろうかと思いやる歌で、秋雑歌の最初に置かれ、題詞は「七夕」である。地上の人が天上の二星の逢瀬を見守る視点から詠まれ、きらめく天の川の景に逢瀬の喜びへの期待が込められている。ここから長大な七夕歌の一連が始まり、秋雑歌の中心をなしている。
 作者の柿本人麻呂は飛鳥時代、持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人である。この歌は左注によって「柿本人麻呂歌集」に出ると記される歌で、人麻呂自身の作か、人麻呂が書き留めた他人の歌かは定かでない。

 初句「天の川」は七夕の二星を隔てる天上の川で、一連を通じて繰り返し詠まれる語である。
 二句「水さへに照る」の「さへ」は添加を表し、水までも照り輝くの意である。舟の輝きが川面に映る様子を示す。
 三句「舟泊てて」の「泊つ」は舟が港や岸に着く意である。
 四句「舟なる人は」は舟にいる人はの意で、彦星を指す。
 結句「妹と見えきや」の「見ゆ」は逢う意、「き」は過去、「や」は疑問である。逢瀬が遂げられたかを思いやって結ぶ。

はつ:舟が港や岸に着く
みゆ:見られる。人と逢う
作者
柿本人麻呂
出典
万葉集
前の歌
六月の地さへ裂けて照る日にも 我が袖干めや君に逢はずして
次の歌
久方の天の川原にぬえ鳥の うら歎げましつすべなきまでに