天の川安の渡りに舟浮けて
秋立つ待つと妹に告げこそ
- 歌の意味
-
天の川の安の渡し場に舟を浮かべて、秋の来るのを待っていると、妻に伝えておくれ。
- 鑑賞
-
巻第十 秋雑歌 2000
詞書は前の歌に続き「七夕」
天の川の安の渡しに舟を浮かべて秋の来るのを待っていると、織女に伝えてほしいと願う彦星の歌である。七夕の逢瀬の日を待ちわびる心が、舟の準備を整えて待つ姿として具体的に表されている。「安の渡り」は日本神話の天の安河を思わせ、中国由来の七夕伝説を日本の神話の世界に重ねている。
作者の柿本人麻呂は飛鳥時代、持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人である。この歌は左注によって「柿本人麻呂歌集」に出ると記される歌で、人麻呂自身の作か、人麻呂が書き留めた他人の歌かは定かでない。
初句「天の川」は二星を隔てる川である。
二句「安の渡りに」は天の安河の渡し場の意で、日本神話の天の安河を踏まえた語である。
三句「舟浮けて」は舟を浮かべての意である。出発の準備を整えた様子を示す。
四句「秋立つ待つと」は秋が来るのを待っているとの意である。
結句「妹に告げこそ」の「こそ」は願望の終助詞で、妻に伝えておくれの意である。
やすのわたり:天の安河の渡し場
わたり:渡し場
- 作者
-
柿本人麻呂
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
赤らひく色ぐはし子をしば見れば 人妻ゆゑに我れ恋ひぬべし
- 次の歌
-
大空ゆ通ふ我れすら汝がゆゑに 天の川道をなづみてぞ来し