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かりにのみ人の見ゆれば女郎花
花のたもとぞ露けかりける

歌の意味
人は狩りにかこつけて、仮そめにばかり姿を見せるので、女郎花の花の袂は涙の露に濡れていることだ。
鑑賞
巻第三 秋歌 166

詞書「陽成院御屏風に、小鷹狩りしたる所」
 人が狩りのついでに仮そめにしか訪れないので、女郎花の花の袂は涙の露に濡れていると詠む歌である。女郎花を、男の訪れの浅さを嘆く女性に見立て、花に置く露を涙になぞらえている。詞書によれば、陽成院の屏風に、小鷹狩りをしている場面が描かれていたのに添えた歌である。
 作者の「紀貫之」は、古今和歌集の撰者の中心人物で、仮名序を執筆し、土佐日記を著した。三十六歌仙に数えられる。

 初句「かりにのみ」は、「かり」に狩りの意と仮にの意を掛けた掛詞で、本巻の第百六十四首の四句と同じ語句である。本歌で、「かり」を掛詞とする四首の一連が結ばれる。
 二句「人の見ゆれば」は、人が姿を見せるので、の意である。
 三句「女郎花」は、女性に見立てられた女郎花をいう。
 四句「花のたもとぞ」は、花の袂が、の意で、女郎花の花を女性の袂に見立てる。「ぞ」は係助詞で、結句の「ける」で結ぶ係り結びとなる。
 結句「露けかりける」は、露っぽく濡れていることだ、の意で、花に置く露を涙に重ねている。前歌が仮そめに来た人が心を奪われたと詠んだのに対し、本歌は仮そめにしか来ない人を待つ女郎花の嘆きを詠み、男の側と女の側とで対をなしている。

かり:狩りの意と、仮そめの意を掛ける
こたかがり:秋に小型の鷹を使って小鳥を捕らえる狩り。小鷹狩り
作者
紀貫之
出典
拾遺和歌集
前の歌
かりにとて我は来つれど女郎花 見るに心ぞ思ひつきぬる
次の歌
植ゑたてて君が標結ふ花なれば 玉と見えてや露も置くらん