霜置かぬ袖だに冴ゆる冬の夜に
鴨の上毛を思ひこそやれ
- 歌の意味
-
霜の置かない私の袖でさえ冷え冷えとする冬の夜に、霜の置く鴨の上毛はどれほど冷たいかと思いやることだ。
- 鑑賞
-
巻第四 冬歌 230
詞書「題しらず」
霜の置かない屋内の袖でさえ冷え込む冬の夜に、水の上で霜を受ける鴨の羽毛の冷たさを思いやる歌である。自らの寒さから鴨の身へと思いを移し、冬の夜の厳しさをきわだたせている。
作者の「右衛門督公任」は藤原公任である。関白藤原頼忠の子で、権大納言に至った。和漢朗詠集を編み、拾遺抄の撰者とされる。中古三十六歌仙に数えられる。
初句「霜置かぬ」は、霜の置かない、の意で、屋内にいる自分の袖をいう。
二句「袖だに冴ゆる」は、袖でさえ冷え込む、の意で、「だに」は軽いものを挙げて重いものを類推させる副助詞である。
三句「冬の夜に」は、冬の夜に、の意である。
四句「鴨の上毛を」は、鴨の羽の表面をおおう毛を、の意で、そこに霜が置くことを含む。
結句「思ひこそやれ」は、思いやることだ、の意で、係助詞「こそ」を受けて已然形「やれ」で結ぶ。本巻の第二百十七首の四句と同じ表現で、身近な寒さから遠くのものを思いやる趣向を共有している。
うはげ:鳥の羽の表面をおおう毛
さゆ:冷え込む。冷たく凍える
- 作者
-
藤原公任
- 出典
-
拾遺和歌集
- 前の歌
-
霜の上に降る初雪の朝氷 解けずも物を思ふころかな
- 次の歌
-
池水や氷解くらん蘆鴨の 夜深く声の騒ぐなるかな