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春の野の若菜ならねど君がため
年の数をもつまんとぞ思ふ

歌の意味
春の野の若菜ではないけれども、あなたのために、年の数をも摘み、積み重ねようと思う。
鑑賞
巻第五 賀歌 285

詞書は前の歌に続き「五条内侍のかみの賀、民部卿清貫し侍りける時、屏風に」
 春の野で若菜を摘むように、君のために年の数をも摘み積み重ねようと詠む歌である。若菜摘みという長寿を願う春の行事に寄せて、齢を積み増すことを願っている。詞書によれば、前歌と同じく五条の尚侍の賀の屏風に添えた歌である。
 作者の「伊勢」は、平安時代前期から中期の女流歌人で、藤原継蔭の娘である。宇多天皇の中宮温子に仕え、中務の母となった。三十六歌仙に数えられる。

 初句「春の野の」は、春の野の、の意である。
 二句「若菜ならねど」は、若菜ではないけれども、の意で、若菜は正月の子の日などに摘み、長寿を願って食べた。
 三句「君がため」は、あなたのために、の意で、本巻の第二百八十三首の三句と同じ句である。
 四句「年の数をも」は、年齢の数をも、の意である。本巻の第二百九十六首も「年の数」を浜の真砂に見立てて詠んでいる。
 結句「つまんとぞ思ふ」は、若菜を摘む意の「摘む」と、年を積み重ねる意の「積む」とを掛け、係助詞「ぞ」を受けて連体形「思ふ」で結ぶ。

つむ:若菜を摘む意と、年を積み重ねる意とを掛ける
わかな:春の初めに摘む食用の若草
作者
伊勢
出典
拾遺和歌集
前の歌
大空に群れたる鶴のさしながら 思ふ心のありげなるかな
次の歌
桜花今宵かざしに挿しながら かくて千年の春をこそ経め