- 歌の意味
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春霞が立ち、あなたが旅立っていく明け方を見るやいなや、私の心は上の空になってしまいそうだ。
- 鑑賞
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巻第六 別歌 301
詞書「春、ものへまかりける人の、暁に出で立ちける所にて、留まり侍りける人の詠み侍りける」
春霞の立つ明け方に旅立つ人を見送り、見るそばから心が上の空になってしまいそうだと詠む歌である。霞の立ちのぼる空と、人を送って虚ろになる心の「そら」とを重ね、別れの瞬間の放心を表している。詞書によれば、春に旅に出る人が明け方に出立した所で、都に留まる人が詠んだ歌である。別の巻の巻頭に置かれ、旅立つ人を見送る側の心から巻を詠み起こしている。巻末の第三百五十三首は、旅先から都へ便りを送ろうとする旅人の歌であり、見送る側と旅をする側とで巻頭と巻末が呼応している。
初句「春霞」は、春に立ちこめる霞をいう。この歌から第三百四首までは春の別れが並び、第三百五首の夏衣、第三百六首の秋風、第三百十首の時雨と、季節の順に別れの歌が配されている。
二句「たつ暁を」は、霞が立つ意と、人が旅立つ意とを「たつ」に掛けている。本巻の第三百四十六首の結句も「暁」を詠み、旅立ちの暁と旅先の暁とが対をなしている。
三句「見るからに」は、見るとすぐに、見るそばから、の意である。
四句「心ぞそらに」は、心が上の空に、の意で、霞の立つ空を響かせている。係助詞「ぞ」による強調である。
結句「なりぬべらなる」は、なってしまいそうだ、の意で、「べらなり」は平安時代初期に多く用いられた推量の助動詞であり、係助詞「ぞ」を受けて連体形「べらなる」で結ぶ。
たつ:霞が立つ意と、人が旅立つ意とを掛ける
そら:上の空の意と、霞の立つ空の意とを掛ける
あかつき:夜明け前のまだ暗いころ
まかる:都から地方へ行く。出かける
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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