わたつみの波にも濡れぬ浮島の
松に心を寄せて頼まん
- 歌の意味
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大海の波にも濡れることのない浮島の松に心を寄せて、頼みにしよう。
- 鑑賞
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巻第八 雑歌上 458
詞書「物へまかりける人に幣遣はしける、衣箱に、浮島の形押し侍りて」
大海の波にも濡れることのない浮島の松に心を寄せて、頼みにしようと詠む歌である。詞書から、旅立つ人に餞別の幣を贈った折、衣箱に浮島の形を押した飾りに添えた歌とわかる。波に浮かびながらも濡れない浮島の松に、旅の無事への祈りを託している。「波」「寄せ」と海の縁語を用いて、海辺の浮島の景と旅人を思う心とを結んでいる。前の二首に続いて松を詠み、本巻の第四百六十首、第四百八十五首にも作者が旅立つ人に贈った歌が見える。
作者の「よしのぶ」は大中臣能宣である。大中臣頼基の子で、伊勢神宮の祭主を務めた。梨壺の五人の一人で、三十六歌仙に数えられる。
初句「わたつみの」は、大海の、の意である。
二句「波にも濡れぬ」は、波にも濡れることのない、の意で、浮島が波に浮かんでいるために濡れないという趣向である。
三句「浮島の」は、浮島の、の意で、陸奥国の塩竈の浦にある島の名とされる歌枕である。
四句「松に心を」は、松に心を、の意で、前歌の第四百五十七首の海に浸る松に対して、波に濡れない松を詠んでいる。
結句「寄せて頼まん」は、心を寄せて頼みにしよう、の意で、「寄せ」は波の縁語であり、「ん」は意志の助動詞である。
わたつみ:海。また海の神
ぬさ:旅の安全を祈って道祖神に手向ける供え物
うきしま:陸奥国の塩竈の浦にあるとされた島の名
- 作者
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大中臣能宣
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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海にのみひちたる松の深緑 いくしほとかは知るべかるらん
- 次の歌
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加古の島松原越しに鳴く鶴の あな長々し聞く人なしに