天つ星道も宿りもありながら
空にうきても思ほゆるかな
- 歌の意味
-
空の星には通る道も宿る所もあるのに、私は空に浮いたように頼りなく、憂わしく思われることだ。
- 鑑賞
-
巻第八 雑歌上 479
詞書「流され侍りける道にて詠み侍りける」
空の星には行く道も宿る所もあるのに、自分は空に浮いたように頼りなく思われると詠む歌である。詞書から、大宰府へ左遷される道中で詠んだ歌とわかる。定まった道と宿を持つ星と、行く先も身の置き所も定まらない我が身とを対比させ、流罪の身の不安と憂いを表している。次歌の第四百八十首も同じ作者の歌で、二首続けて配流の嘆きを詠んでいる。
作者の「贈太政大臣」は菅原道真である。菅原是善の子で、宇多天皇に重用されて右大臣に至ったが、大宰権帥に左遷され、その地で没した。死後に正一位太政大臣を贈られた。本巻の第四百七十三首は、その母が道真の元服の夜に詠んだ歌である。
初句「天つ星」は、空の星、の意である。
二句「道も宿りも」は、通る道も宿る所も、の意で、星の運行する道と、星の宿る星宿をいう。
三句「ありながら」は、あるのに、の意である。本巻の第四百八十六首の三句も同じ「ありながら」である。
四句「空にうきても」は、空に浮いたようで、の意である。「うき」は空に「浮き」の意に、つらい意の「憂き」を響かせている。
結句「思ほゆるかな」は、思われることよ、の意で、「思ほゆ」は自然にそう思われる意、「かな」は詠嘆の終助詞である。
うく:空に浮く意に、憂きを響かせる
やどり:星の宿る所。星宿
おもほゆ:自然に思われる
- 作者
-
菅原道真
- 出典
-
拾遺和歌集
- 前の歌
-
夕されば衣手寒し我妹子が 解き洗ひ衣行きて早着む
- 次の歌
-
流れ木も三年ありてはあひ見てん 世のうき事ぞ返らざりける