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流れ木も三年ありてはあひ見てん
世のうき事ぞ返らざりける

歌の意味
流れていく木でさえ、三年たてばまた巡り会うことだろう。けれども、この世の憂いことだけは元へ返らないことだ。
鑑賞
巻第八 雑歌上 480

詞書「浮き木といふ心を」
 流れていく木でさえ三年たてば巡り会うだろうに、この世の憂いことだけは元へ返らないと詠む歌である。詞書から、浮き木という題で詠んだ歌とわかる。いつかは巡り戻る流れ木と、二度と都へ帰ることのかなわない我が身の憂き境遇とを対比させ、配流の身の深い嘆きを表している。前歌の第四百七十九首と同じく道真の歌で、前歌が空の星に寄せたのに対し、この歌は水に浮かぶ木に寄せている。
 作者の「贈太政大臣」は菅原道真である。菅原是善の子で、宇多天皇に重用されて右大臣に至ったが、大宰権帥に左遷され、その地で没した。死後に正一位太政大臣を贈られた。

 初句「流れ木も」は、流れていく木でさえ、の意である。
 二句「三年ありては」は、三年たてば、の意である。
 三句「あひ見てん」は、巡り会うことだろう、の意で、「て」は完了の助動詞「つ」の未然形、「ん」は推量の助動詞である。ここで句切れとなる。
 四句「世のうき事ぞ」は、この世の憂いことは、の意である。「うき」は詞書の「浮き木」の「浮き」と、つらい意の「憂き」とを掛けた掛詞である。「ぞ」は強意の係助詞である。
 結句「返らざりける」は、元へ返らないことだ、の意で、係助詞「ぞ」を受けて連体形の「ける」で結んでいる。前歌の「空にうきても」と同じく、「うき」に憂いを重ねている。

うき:浮き木の浮きと、つらい意の憂きを掛ける
うきき:水に浮かび漂う木
あひみる:対面する。巡り会う
作者
菅原道真
出典
拾遺和歌集
前の歌
天つ星道も宿りもありながら 空にうきても思ほゆるかな
次の歌
憂き世には門させりとも見えなくに などか我が身の出でがてにする