古典和歌stream

天の原あかねさし出づる光には
いづれの沼かさえ残るべき

歌の意味
大空に茜色に照り映えて昇る日の光を受けては、どの沼が凍ったまま残っていられようか。
鑑賞
巻第十八 雑歌下 1691

詞書「日」
 日を題とする一首で、菅原道真の一字題の歌十二首の二首目である。大空に昇る朝日の光を受ければ、凍ったまま残る沼などない、と詠む。日の光を天皇の恵みになぞらえ、その恵みがいずれわが身にも及ぶことを願う心を込めたものと解されている。
 作者の「菅贈太政大臣」は菅原道真である。原文に作者名はなく、前歌から続く。菅原是善の子で、学者、漢詩人として知られ、右大臣に至ったが、醍醐天皇の代に大宰権帥に左遷され、配所で没した。没後に太政大臣を追贈されたため、この呼称で記される。

 初句「天の原」は、広々とした大空のことである。空の広さをまず示し、日の出を導く。
 二句「あかねさし出づる」は、茜色に照り映えて昇る、の意である。「あかねさす」は「日」「照る」などにかかる枕詞としても用いられる語で、ここでは朝日の色を表している。
 三句「光には」は、その光の前では、の意である。係助詞「は」が光を取り立て、その力の大きさを際立たせる。
 四句「いづれの沼か」の「か」は反語の係助詞である。どの沼が、と問う形で、どの沼もそうではないという打ち消しを導く。
 結句「さえ残るべき」は、係助詞「か」を受けて助動詞「べし」の連体形「べき」で結ぶ係り結びである。「さえ」は冷え凍ることで、凍ったまま残る沼はないという反語となる。題の「日」が、冷えきったものを解かす力として描かれている。

さゆ:冷え凍る。冷えきる
あかねさす:茜色に照り映える。「日」「照る」などにかかる枕詞
作者
菅原道真
出典
新古今和歌集
前の歌
あしひきのこなたかなたに道はあれど 都へいざといふ人ぞなき
次の歌
月ごとに流ると思ひしますかがみ 西の海にもとまらざりけり