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谷深み春の光の遅ければ
雪につつめる鶯の声

歌の意味
谷が深いので春の光が届くのが遅く、雪に包まれてこもっている鶯の声であることよ。
鑑賞
巻第十六 雑歌上 1441

詞書「鶯を」
 鶯と梅を詠む一連の一首目である。谷が深く春の光が届くのが遅いために、鶯の声がまだ雪に包まれてこもっていると詠む。詞書は題を示すのみで、詠まれた事情は記されていない。
 作者の「菅贈太政大臣」は菅原道真である。菅原是善の子で、宇多、醍醐の二代に重く用いられて右大臣に至ったが、大宰権帥に左遷されてその地で没した。のちに太政大臣を追贈されたことから、贈太政大臣と呼ばれる。

 初句「谷深み」は、名詞と形容詞の語幹に接尾語「み」を添えた形で、谷が深いので、の意を表す。
 二句「春の光の」は、春の日の光をいう。谷の底には春の日差しが届きにくいことを示す。
 三句「遅ければ」は、已然形に「ば」を添えた確定条件で、遅いので、の意となる。
 四句「雪につつめる」の「る」は存続の助動詞で、雪に包まれたままでいることをいう。鶯の声がまだ雪の中にこもって、外に響かないさまである。
 結句「鶯の声」は体言止めである。鶯は谷から出て春を告げる鳥とされ、その声がまだ谷の雪にこもっているとする。前歌までが氷や雪のとける春を詠んだのに対し、雪の残る谷の遅い春が置かれ、一連の中で対照をなす。

つつむ:包む。中に閉じこめる
作者
菅原道真
出典
新古今和歌集
前の歌
春来れば袖の氷もとけにけり 漏りくる月の宿るばかりに
次の歌
降る雪に色まどはせる梅の花 鶯のみやわきてしのばん