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夕されば衣手寒し我妹子が
解き洗ひ衣行きて早着む

歌の意味
夕方になると袖が寒い。いとしい妻がほどいて洗ってくれた衣を、帰って行って早く着たいものだ。
鑑賞
巻第八 雑歌上 478

詞書「唐土へ遣はしける時詠める」
 夕方になると袖が寒い、妻が解き洗いしてくれた衣を早く帰って着たいと詠む歌である。詞書によれば、唐土へ遣わされた時の歌とされる。遠い旅先で夕暮れの寒さを感じるにつけ、家で待つ妻と、その妻が整えてくれた衣を恋しく思う心を表している。本巻の第四百七十四首から続く衣の歌群を締めくくり、衣に寄せる思いを旅の望郷へと広げている。
 作者の「人まろ」は柿本人麻呂である。飛鳥時代の宮廷歌人で、万葉集を代表する歌人として歌聖と仰がれ、三十六歌仙に数えられる。拾遺和歌集には、万葉集の歌が人麻呂の作として多く収められている。
 万葉集巻十五の遣新羅使の歌群に、ほぼ同じ形の歌が見える。拾遺和歌集では人麻呂が唐土へ遣わされた時の歌として収められている。

 初句「夕されば」は、夕方になると、の意である。
 二句「衣手寒し」は、袖が寒い、の意で、ここで句切れとなる。
 三句「我妹子が」は、いとしい妻が、の意である。
 四句「解き洗ひ衣」は、縫い目をほどいて洗い張りした衣、の意で、八音の字余りである。
 結句「行きて早着む」は、帰って行って早く着たい、の意で、「む」は意志や願望を表す助動詞である。

ゆふさる:夕方になる
わぎもこ:私のいとしい妻
ときあらひぎぬ:縫い目をほどいて洗い張りした衣
作者
柿本人麻呂
出典
拾遺和歌集
前の歌
白波はたてど衣に重ならず 明石も須磨もおのがうらうら
次の歌
天つ星道も宿りもありながら 空にうきても思ほゆるかな