日並の皇子の命の馬並めて
み狩り立たしし時は来向ふ
- 歌の意味
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日並の皇子の命が馬を並べて狩りにお出かけになった、あの時刻が今まさにやって来る。
- 鑑賞
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巻第一 雑歌 49
詞書は前の歌に続き「軽皇子の安騎の野に宿りたまふ時に、柿本朝臣人麻呂の作る歌 短歌」
かつて日並皇子(草壁皇子)が馬を連ねて狩りに出られた、その同じ時刻が今まさにめぐって来たと詠む歌である。前歌の夜明けを受けて、亡き皇子の狩りの時と今の時とが重なり合う瞬間をとらえ、父の姿をなぞるように狩りに立つ軽皇子を暗示している。四首の短歌を締めくくる歌として、亡き皇子への追慕と、その後を継ぐ軽皇子への期待とが一つに結ばれている。
作者の柿本人麻呂は、持統天皇と文武天皇の時代に活躍した宮廷歌人で、万葉集を代表する歌人である。官位は低かったとみられるが、長歌を中心に雄大で格調高い歌を数多く残し、後世には「歌聖」とたたえられた。
初句「日並の」は、「日並」が日である天皇と並んで天下を治めるの意で、草壁皇子をたたえる呼び名である。「ひなみしの」と読み、初句は字余りとなっている。
二句「皇子の命の」は、皇子に対する敬称で、初句とあわせて草壁皇子を指している。
三句「馬並めて」は、馬を並べての意で、狩りに出る一行の盛んなさまを示している。本巻の第四首の三句にも「馬並めて」とあり、舒明天皇の狩りを詠む歌と同じ句を用いて、皇統に受け継がれる狩りの伝統を思わせている。
四句「み狩り立たしし」は、「み」が美称、「立たす」が「立つ」の尊敬語、「し」が過去の助動詞「き」の連体形で、狩りにお出かけになったの意である。
結句「時は来向ふ」は、その時刻が今こちらへやって来るの意である。過去の皇子の狩りの時と現在とが重なる瞬間を示し、軽皇子がその跡を継ぐことを予感させて一首を結んでいる。
ひなみし:日と並んで天下を治める意で、草壁皇子をたたえる呼び名
みかり:狩りの敬称
きむかふ:こちらへやって来る
- 作者
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柿本人麻呂
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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東の野にかぎろひの立つ見えて かへり見すれば月かたぶきぬ
- 次の歌
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采女の袖吹きかへす明日香風 都を遠みいたづらに吹く