采女の袖吹きかへす明日香風
都を遠みいたづらに吹く
- 歌の意味
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かつては采女の袖を吹きひるがえしていた明日香の風も、都が遠くなってしまったので、今はむなしく吹いている。
- 鑑賞
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巻第一 雑歌 51
詞書「明日香宮より藤原宮に遷居りし後に、志貴皇子の作らす歌」
都が明日香から藤原へ移った後、かつて華やかな采女たちの袖を吹きひるがえしていた明日香の風が、今はむなしく吹くばかりだと、旧都のさびしさを詠んだ歌である。人の姿の消えた旧都に吹く風だけをとらえ、過ぎ去った華やかな日々への哀惜を簡潔に表している。持統天皇八年(694)の藤原京遷都の後の作とされ、近江の旧都を悼んだ人麻呂や黒人の荒都歌と並ぶ、旧都を詠んだ名歌である。
作者の志貴皇子は、天智天皇の皇子である。天武天皇の系統が皇位を継ぐなかで政治の表舞台には立たなかったが、清新な叙景歌にすぐれた歌人として知られる。子の白壁王が、のちに光仁天皇として即位した。
初句「采女の」は、「采女」が地方の豪族の娘から選ばれて天皇の身の回りに仕えた女官をいう。「うねめの」と読むと四音で、字足らずとなっている。
二句「袖吹きかへす」は、袖を吹きひるがえすの意である。采女たちの美しい袖が風になびくさまを描き、かつての都の華やぎを示している。
三句「明日香風」は、明日香の地を吹く風の意で、体言で句を切っている。地名に「風」を付けた簡潔な言葉が、旧都の風情を印象深く伝えている。
四句「都を遠み」は、「〜を〜み」のミ語法で、都が遠いのでの意である。都が藤原に移ったために、明日香が都から遠く離れてしまったことを示している。
結句「いたづらに吹く」は、むなしく吹いているの意である。二句で描いたかつての華やぎと今のむなしさとを対比させ、旧都の寂しさを深く印象づけている。
うねめ:地方の豪族の娘から選ばれ、天皇の身の回りに仕えた女官
- 作者
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志貴皇子
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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日並の皇子の命の馬並めて み狩り立たしし時は来向ふ
- 次の歌
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藤原の大宮仕へ生れ付くや 娘子がともは羨しきろかも