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石見の海打歌の山の木の間より
我が振る袖を妹見つらむか

歌の意味
石見の海に臨む打歌の山の木の間から私が振る袖を、妻は見ただろうか。
鑑賞
巻第二 相聞 139

詞書は前の歌に続き「柿本朝臣人麻呂、石見国より妻に別れて上り来る時の歌、或本の歌一首并せて短歌、反歌一首」
 打歌の山の木の間から振った袖を、妻は見てくれただろうかと案じた一首である。
 人麻呂が石見の国で妻と別れ、都へ上るときに詠んだ一連は、石見相聞歌と呼ばれ、人麻呂の代表作として名高い。本歌は或本に伝わる長歌の第百三十八首に添えられた反歌で、三句以下は第百三十二首と同じである。左注に、歌の体は同じであるが句々が入れ替わっているので重ねて載せた、とある。
 作者の柿本人麻呂は、持統天皇、文武天皇の時代に活躍した宮廷歌人で、長歌や挽歌にすぐれ、万葉集を代表する歌人である。後の時代には歌聖と称えられた。

 初句「石見の海」は第百三十二首の「石見のや」にあたる句で、六音の字余りである。
 二句「打歌の山の」の打歌の山は所在未詳で、高角山と同じ山とする説もある。
 三句「木の間より」は第百三十二首の三句と同じである。
 四句「我が振る袖を」も第百三十二首と同じで、別れを惜しむしぐさを示す。
 結句「妹見つらむか」は第百三十二首の結句と同じで、妻は見ただろうかと思いやる。

ふる:袖などを振る。別れを惜しみ、相手の魂を招くしぐさ
作者
柿本人麻呂
出典
万葉集
前の歌
秋山に落つる黄葉しましくは な散り乱ひそ妹があたり見む
次の歌
な思ひと君は言へども逢はむ時 いつと知りてか我が恋ひずあらむ