世の中にあやしき物は雨降れど
大原河のひるにぞありける
- 歌の意味
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世の中で不思議なものは、雨が降っているのに「ひる」という、大原川の蛭であったよ。
- 鑑賞
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巻第九 雑歌下 550
詞書「雨降る日大原川をまかり渡りけるに、蛭のつきたりければ」
世の中で不思議なものは、雨が降っているのに「ひる」と呼ばれる大原川の蛭であったと詠む歌である。詞書から、雨の降る日に大原川を渡ったところ、蛭が足についたので詠んだ歌とわかる。生き物の「蛭」と、晴れた日中を思わせる「昼」を掛け、雨の日なのに「ひる」とはおかしなものだと、蛭に吸いつかれた災難を笑いに変えている。前の三首の名と実の違いを面白がる趣向を受け継ぎ、川の歌が続いている。
作者の恵慶法師は、平安中期の僧で、播磨国の国分寺の講師を務めたとされる。中古三十六歌仙の一人で、百人一首の「八重むぐら」の歌で知られる。
初句「世の中に」は、世の中で、の意である。
二句「あやしき物は」は、不思議なものは、の意で、結句でその答えを示している。
三句「雨降れど」は、雨が降っているのに、の意で、「ど」は逆接の接続助詞であり、結句の「昼」と対比させている。
四句「大原河の」は、大原川の、の意で、前の三首の第五百四十七首から第五百四十九首の「三笠」「梅津河」「漆河」に続き、地名を詠む歌である。次歌の第五百五十一首の初句「河柳」と、川の語でつながっている。
結句「ひるにぞありける」は、「ひる」が生き物の「蛭」と「昼」を掛ける掛詞である。係助詞「ぞ」を受けて過去の助動詞「けり」の連体形「ける」で結ぶ係り結びである。
ひる:血を吸う「蛭」と、「昼」を掛ける
- 作者
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恵慶法師
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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名には言へど黒くも見えず漆河 さすがに渡る水はぬるめり
- 次の歌
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河柳糸は緑にあるものを いづれかあけの衣なるらん