人目をもつつまぬものと思ひせば
袖の涙のかからましやは
- 歌の意味
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人目をはばからなくてよいものと思えたならば、袖にこんなにも涙がかかることがあっただろうか。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 764
詞書「忍びてもの言ひ侍りける人の、人しげき所に侍りければ」
人目をはばからずに逢えるものと思えたなら、袖にこれほど涙がかかることはなかっただろうと詠む歌である。詞書から、ひそかに言い交わしていた人が人の多い所にいたので詠んだ歌とわかる。人目を気にして逢えないつらさを、袖の涙で表している。前歌の第七百六十三首と「かかる」の語を共有し、涙のかかる袖を詠む一連を結んでいる。
作者の「実方朝臣」は藤原実方である。左大臣藤原師尹の孫で、左近衛中将を経て陸奥守となり、任地で没した。中古三十六歌仙に数えられ、百人一首の「かくとだにえやは伊吹のさしも草」の歌で知られる。
初句「人目をも」は、人目をも、の意である。
二句「つつまぬものと」は、はばからなくてよいものと、の意で、「つつむ」は人目を気にして隠す意である。
三句「思ひせば」は、思えたならば、の意で、「せ」は過去の助動詞「き」の未然形とされ、「ば」とともに反実仮想の仮定を表す。
四句「袖の涙の」は、袖に涙が、の意である。
結句「かからましやは」は、かかっただろうか、いやかからなかった、の意で、「まし」は反実仮想、「やは」は反語を表す。前歌の第七百六十三首の四句「かかりけりとも」と同じ語を用いている。
つつむ:慎む。人目をはばかる、隠す
ひとめ:人目。他人の見る目
- 作者
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藤原実方
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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衣をや脱ぎてやらまし涙のみ かかりけりとも人の見るべく
- 次の歌
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石上ふるとも雨にさはらめや 逢はむと妹に言ひてしものを