衣をや脱ぎてやらまし涙のみ
かかりけりとも人の見るべく
- 歌の意味
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この衣を脱いで送ってやろうか。涙ばかりがこのようにかかっていたのだと、あの人が見て知るように。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 763
詞書は前の歌に続き「題しらず」
涙ばかりがかかっていたと相手に見てもらえるように、いっそこの衣を脱いで送ってやろうかと詠む歌である。言葉では伝わらない恋の苦しさを、涙に濡れた衣そのものを見せることで知らせたいという思いを表している。前歌の第七百六十二首の衣川に続き、涙に濡れる衣を詠み、次歌の第七百六十四首とは「かかる」の語を共有している。
初句「衣をや」は、衣を、の意で、係助詞「や」は二句の連体形「まし」で結ぶ係り結びである。前歌の第七百六十二首の四句「衣川とぞ」と、衣の語を共有している。
二句「脱ぎてやらまし」は、脱いで送ってやろうか、の意で、「まし」はためらいの意志を表す。ここで句切れとなる二句切れの歌である。
三句「涙のみ」は、涙ばかりが、の意である。
四句「かかりけりとも」は、このようにかかっていたのだと、の意で、「かかり」に涙が衣に「掛かり」と「かくあり」の意を重ねている。次歌の第七百六十四首の結句「かからましやは」と同じ語である。
結句「人の見るべく」は、あの人が見るように、の意で、倒置して二句の理由を示している。
やる:遣る。送る、届ける
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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袂より落つる涙はみちのくの 衣川とぞ言ふべかりける
- 次の歌
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人目をもつつまぬものと思ひせば 袖の涙のかからましやは