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いかならむ巌の中に住まばかは
世の憂きことの聞こえこざらむ

歌の意味
どのような巌の中に住んだならば、世の中のつらいことが聞こえてこないのだろうか。
鑑賞
巻第十八 雑歌下 952

詞書「題しらず」
 世のつらい話が聞こえてこない場所を求めて、どのような巌の中に住めばよいのかと問う歌である。どこに逃れても世の憂さからは逃れられないという嘆きが、反語を含む問いに込められている。
 前歌の吉野の岩の道に続き、さらに巌の中という極端な隠れ場所を思い描いており、山に逃れる一連の歌の中で思いが深まっている。
 作者は「読人しらず」とされ、名は伝わらない。

 初句「いかならむ」は、どのような、の意である。
 二句「巌の中に」は、大きな岩の中に、の意。本文の「中」は読み仮名の行で「うち」と読む。
 三句「住まばかは」は、住んだならば…だろうか、の意。「かは」は反語を含む疑問の係助詞で、結句の連体形「む」と呼応する。
 四句「世の憂きことの」は、世の中のつらいことが、の意である。
 結句「聞こえこざらむ」は、聞こえてこないだろうか、の意。「ざら」は打消、「む」は推量で、「かは」の結びとなる。

いはほ:大きな岩、岩石
作者
よみ人しらず
出典
古今和歌集
前の歌
世にふれば憂さこそまされみ吉野の 岩のかけ道踏みならしてむ
次の歌
葦引の山のまにまに隠れなむ 憂き世の中はあるかひもなし